宝塚音楽学校の厳しいルール廃止|時代遅れ?現代に合った教育とハラスメントを防ぐために

2020年11月06日 2023年10月27日 ビジネスマナー

太田章代
執筆者:新人育成トレーナー 太田章代
日本一気さくで身近な研修講師、太田章代です。 先日、タカラジェンヌを養成する宝塚音楽学校が、伝統のルールを廃止したことを発表しました。宝塚音楽学校は2年制で本科生(2年生)、予科生(1年生)がおり、上下関係が厳しいイメージはありますよね。下級生が上級生に対しておこなう厳しいルールがあり、下級生に負担が生じていたため廃止に踏み切ったそうです。

宝塚音楽学校が無駄なルールを廃止したのは、個人的には大賛成です。企業研修に携わる者として見習いたいと思い、企業での無駄なルールに置き換えて考えてみました。

今回一番お伝えしたいことは『ルールは顧客に価値を提供できることだけにする』ということです。

あなたの会社でも廃止した方がよいルールはありませんか?働きやすい職場づくりのために、宝塚音楽学校の例を参考になさってはいかがでしょうか。

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動画でも学べます。聞き流すだけでも理解できますよ!

宝塚音楽学校が廃止した伝統的なルールとは

学校側は「舞台人として必要不可欠なルールではなく、近年のハラスメントに厳しい時代状況も鑑みた」と説明しています。廃止したルールは、

・上級生が利用している阪急電鉄が通るとき礼をする ⇒廃止 ・遠くにいる上級生に大声であいさつする ⇒黙礼に変更 ・上級生への返事は原則「はい」「いいえ」などの「予科語」に限定 ⇒廃止 ・上級生の前では、みけんにしわを寄せて口角を下げる「予科顔」をする ⇒廃止 ・ルールを違反した予科生が上級生に謝る際、他の予科生も違反を自主申告して一 緒に謝る「連続謝り」をする ⇒廃止 ・上級生へ質問を書いたノートを提出 ⇒廃止

などです。「予科顔」は困った時にする表情ですよね。上級生の前で笑顔を封印するのは、どう考えてもおかしなルールです。「連続謝り」など、ルールという名のハラスメントだと感じます。

このルールは宝塚音楽学校が定めたものではなく、代々の生徒たちで考えられ自主的に守られてきたものです。創立100年を超えているので、時代錯誤なルールもあったという事ですね。

組織ではルールは少ない方がいい

ダメな組織程、無意味なルールが増えていくと思っています。これは私の反省でもあります。管理職時代に、決められたルールが守られないと、そのルールを守るためにまたルールをつくる。ルールが雪だるまのように増えていくのです。

例えば、提出物を忘れる人がいたので、チェックリストを作成して提出物と一緒に提出するというルールを決めました。そのチェックリストの項目がどんどん増えていくので、チェックするだけで一苦労。10項目くらいなら読みますが、30項目もあったら読まないですよね。

また営業の字を上手にするために毎日ペン習字のテキストを提出するというルールを決めました。部下は仕事が終わってからペン習字をするので残業時間が増えました。私も朝6時から赤ペンで添削するために出社して、毎日寝不足でした。今思うと、苦笑いしてしまうルールですが、その当時は真剣でした。

部下たちは、どんどん増えるルールを守るために無駄な仕事をしており、疲弊していたと思われます。上記の2つのルールは顧客に直接関係があることかと言ったら、関係のないことです。

仕事の目的は顧客に価値を提供することです。そのために絶対必要になることであればルールにするのは仕方がありませんが、無駄なルールは廃止した方がいいのです。

社員のモラルを信じよう

例えば身だしなみの一つで髪の色のルールがある会社があります。顧客に価値を提供する上で身だしなみを整えることは大切です。ただ、ルールで決めるより、社員のモラル(道徳心、常識的なふるまい)で整えることができたらいいと思いませんか。他にも、

・上司よりも先に部下が出社しなければならない ・テレワークでさぼっていないか監視するために定時報告をする ・早く帰らせるために18時で冷暖房を切る

などは社員のモラルの問題で、顧客に価値を提供するためのルールではありません。そこら辺は、ルールでがんじがらめにするのではなく、社員一人ひとりのモラルを信じてある程度の裁量を与えた方が、社員の成長にもつながると思います。

ルールによる仕事への弊害とは

ルールは「あれダメ」「これダメ」という、縛りができます。人は自由がなくなると息苦しくなり、仕事も楽しくなくなりますよね。ルールが過剰に厳しいと、

・受身になり自主性がなくなる ・怒られないために仕事をする ・ルールを守らないのはダメな人と白黒はっきりしてしまう ・ルールを守るとこで疲弊してしまう ・ルールに縛られて新しいものが生まれにくくなる

ルールを守ることが仕事になり、仕事の本当の目的である顧客に価値を提供することに支障をきたします。宝塚音楽学校のケースもルールが厳しくて、上級生にビクビクしていまい、体を壊す生徒も出てきて、本来の目的である『舞台人としての修練』に支障をきたしていたようです。本来は社員のモラル(道徳心、常識的なふるまい)を信じてルールを極力減らすことが望ましいのです。仕事にはルールだけではくくり切れない、モラルが問われる環境や状況も多くあります。

まとめ

顧客に価値を提供できること以外で、社員を監視管理して縛りつけるルールや、明らかに時代錯誤なルールなどは廃止をおすすめします。しかし、ルールを全てなくして楽になるという意味ではありません。チームとして仕事をする限り、チームをまとめるという意味でも必要なルールはあります。無駄なルールは廃止という事です。

現代の新人は昔と気質が変わっています。昔は理不尽な要求にも「はい」と答えていたかもしれませんが現代はそれが通用しません。無駄なルールのために、仕事に対するモチベーションが低下したり、ハラスメントと捉えられる恐れもあります。

今あるルールを廃止すべきかを判断する時、または新しくルールをつくる時には必ず「このルールは顧客のためになるルールなのか?」を軸に廃止や新設を行うように心がけてはいかがでしょうか。

宝塚音楽学校も、代々引き継がれてきたタカラジェンヌイズムは残しつつ、時代に合わせた改革をしようという事だと思います。企業でも同じ試みが必要ではないでしょうか。

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