部下の「主体性」を高める方法【教育担当者様向け】
2023年11月10日 2023年11月10日 新人育成担当者向け
あなたの部下は、主体性のある社員に育っていますか。多くの企業は、社員に対して自ら考えて行動できる「主体性」を求めています。主体性が高い人が多い組織は、活気があり事業を伸ばすことができるでしょう。
私が研修で上司から話を伺うと、部下がなかなか思い通りには育ってくれず、『どうすれば主体性を持って働いてくれるのだろう』を悩んでいることも少なくありません。
実は、部下が主体性を持って行動しないのは、上司の指導の仕方や職場環境が大きく関わっている可能性があります。
ここでは、主体性の意味や、部下の主体性を高める方法をご説明します。
YouTube版も公開しています
主体性とは
そもそも主体性とは何でしょうか。主体性とは「自らの意志で行動する態度」のことを言います。
経済産業省が提唱している「社会人の基礎力」では、前に進む力(アクション)の一つに「主体性」があり、物事に進んで取り組む力と定義されています。
出典:人生100年時代の社会人の基礎力【経済産業省】
https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/
「主体性」と「自主性」の違い
「主体性」と似ている言葉に「自主性」があります。自主性も、社員に求められる性質のひとつです。では、主体性と自主性の違いは何でしょうか。
「指示をされる前に自ら動く」という意味は同じです。大きな違いは、「主体性」は何をするべきか目的・目標を設定して自ら考え行動するため、結果に対して自信で責任を取ることが必要なのに対し、「自主性」は目的・目標が明らかになっている中で、何が必要かを自ら判断し率先して動くことです。
つまり、「主体性」目的・目標を自ら設定して行動するのか、「自主性」決まった目的・目標がある中で行動するのかの違いです。
「主体性」と「自主性」の具体例
主体性と自主性の違いを具体的な例をあげてご説明します。会社で地元の飲食店をPRする雑誌を創刊するとします。
「主体性」がある人
読者に喜んでもらえる雑誌にするためには、掲載件数100件を目標にしよう。そのためには、毎日20件飲食店を訪問する必要があると、自ら考え行動する。
「自主性」がある人
上司から掲載件数100件を目標でいこうと通達があった。目標達成できるように、毎日20件飲食店を訪問する必要があると、自ら考え行動する。
いづれも、上司から指示を受ける前に、自ら考え行動していますが、目的や課題を自分で考えて決めるか、はじめから決まっているかが違います。
まずは自主性を身につける
上記の具体例を読んで、主体性はちょっとハードルが高いと思いませんでしたか。まだ仕事を覚えていない新入社員に「主体的に動きなさい」といってもできません。まずは、上司からの指示に対して自主的に動く力をつけてもらい、ある程度仕事ができるようになってから主体性を育んでいきます。 よって習得順序は、先に「自主性」を養い、そのあと「主体性」を身につけてもらうようにします。
部下の主体性を奪っている上司のNG行動
主体性を持った社員が育たない原因は、個々の能力が原因だと決めつけていませんか。もしかしたら、主体性を発揮できないのは、上司や職場の環境に原因があるかもしれません。部下の主体性を奪っている上司のNG行動をあげていきます。
□自分がした方が早いので、仕事を任せない
□必要以上に細かく口を出して、部下を信頼していない
□部下の意見や行動を受け入れず否定から入る
□自分の考えを押しつける傾向にある
□部下の失敗を責めることがある
□部下の意見を真剣に聴かない
上記に1つでも✔が入った場合は、新人の主体性を奪っている可能性があります。部下に変化を求めるなら、まず上司が変わらなければなりません。教育担当の上司が『主体性を引き出す』ことを意識して部下に関わることが重要です。
主体性がない人の特徴
では、これより「主体性」について詳しく解説していきます。まずは、あなたの部下が、主体性のない人の特徴に当てはまっていないか確認をしてみてください。
□仕事に対して受動的
指示をしたことしかしない。仕事に創意工夫がない。
□指示を待っている
自分の仕事が終わったら、次の指示をされるまで待っている。自分の仕事しかせず、他の業務は手伝わない。
□失敗を恐れて行動しない
失敗をしたときのことを考え過ぎて動けない。結果、仕事が遅くなっている。
□仕事の目的意識がない
何のために仕事をしているのか目的がない。将来のビジョンもなく今だけを見ている。
部下の主体性を高める3つの方法
部下の主体性を高めるためには、上司からの働きかけが有効です。
1. 自分で考える機会を設ける
上司はついつい何でも教えてしまいがちですが、部下が自分で考えて行動する機会を設けることが必要です。例えば、「これどうしたらいいですか?」と部下から質問があったら「〇〇さん(部下の名前)だったらどう考える?」と返します。また「この状況で○○さんができることは何があるか、主体的に考えてみて」と質問を投げかかけてみたりします。常に「主体的」という言葉を入れて指導することで、主体性の重要さを浸透させることができます。
2.チャレンジできる環境をつくる
的外れな意見でも、失敗してしまっても否定せずに、受け入れることで安心して自分の考えで行動することができます。失敗を責めないだけではなく、「失敗したけれど、そのチャレンジ精神はいいね」「何もしなければ失敗しない。みんな失敗を積み重ねて成長するから問題なし」など、チャレンジから学んだことを評価します。チャレンジを評価する文化をつくることで、安心して自分の考えで行動できるようになります。自分で考えて行動したという成功体験が蓄積していくことで、主体性に磨きがかかります。
3. 責任は上司が取ると明言して行動する
部下の中には、上司が責任を取ると言っているが「失敗したら評価が下がる」「仕事ができない人だと思われたくない」「責任を負いたくない」という人もいます。「責任を取る」と言うのは簡単ですが、何か問題が起きたときに行動が伴っていないと「口だけだったのか」と思われてしまいます。実際に部下が失敗したときに上司は「私の責任です。〇〇さん(部下)から報告をうけて私が承諾し、実行した結果です」「失敗してもいいと、私が言いました」と、周りに人達に責任の所在をはっきりさせる必要があります。いつも上司が見守ってくれていると感じれば、失敗を恐れずに安心して行動できるようになります。
「主体的」に行動する具体例
部下は上司から「主体的に動くように!」と言われても、ピーンときていません。最後に主体的な行動の一例をあげていきます。せっかく主体的に行動しても、それが必要のない事だと時間の無駄になるため、行動する前に上司に確認が必要な場合もあります。
・社内で書類がどこに何があるかわからない状態だったので、生産性を上げるために周りの人達に働きかけ、一斉に整理整頓をおこなった
・チームでプロジェクトを任されたときに、積極的に意見を出したり、自ら目標を掲げ自分の役割を見つけて行動した
・お客様が気づいていない課題を見つけ、解決策を提示した
・上司とコミュニケーションを取る機会が減っていたため、昼の休憩に自ら上司に話しかけて情報共有した
まとめ
主体性はどこの企業の社員にも必要な性質です。まずは上司が主体的に行動して、部下のお手本になることが大切です。部下の能力は、上司の働きかけ次第で伸びるか、伸びないかがかかっていると思っています。部下の能力を信じて、主体性を高めるサポートをしていきましょう。
執筆者プロフィール
- 新人育成トレーナー
アイキャリア株式会社太田 章代 - 企業・団体でのコミュニケーション研修、ビジネスマナー研修など、2,000回以上(2023年現在)登壇。 プロフィール詳細
新着記事
カテゴリー