職場での「多様性」と「わがまま」の違い【新人教育担当者様向け】

2023年10月14日 2023年11月10日 新人育成担当者向け

太田章代
執筆者:新人育成トレーナー 太田章代
新入社員育成専門の研修トレーナー太田章代です。

「働き方の多様性」「価値観の多様性」など、多様性という言葉を聞くことが多くなりました。

仕事をする上で多様性を認め合う環境は、とても重要だと思っています。しかし私が見ている中で、多様性を盾にしてわがままが通ってしまうという事がありました。個人の自分勝手な行動でも、認めないと「時代が違う!」と批判される流れがきているように感じて、この記事を書いています。

ここでは新入社員教育のための、職場での「多様性」と「わがまま」の違いを詳しくご説明します。研修講師としての、私の考えをお伝えしますので、参考にしていただければ幸いです。

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職場での多様性とは

職場での多様性(ダイバーシティ)は、年齢、性別、経験、仕事観など、様々な人達が集まる中で、個人の違いを認め合うことです。

違いを認め合う一例ですが、部下が自分と違う意見を言ってきたときに、「いや、それは違うよ」と否定するのではなく、「へー、そういう考えなのだね。もっと詳しく教えて。」と、部下の考えを理解しようとする姿勢を見せるなどがあげられます。

そもそも「みんな違う」という前提に立って、お互いに認め合い一体となって働くことが求められています。

多様性を大切にする『目的』

職場における多様性の目的は『お互いの違いを認め合い、能力を最大限発揮して利益を出す』ことです。

例えば、会議での意思決定をする場で、上司の意見ばかりが通っていませんか。会議では新入社員からベテラン社員まで、様々な経歴を持つ幅広い視点の考えを取り入れることで、会議の質を向上することができます。

また、新入社員の多様性を認めて個の能力を引き出すことができれば、最短距離で自立させることができる可能性が高くなります。

多様性を認めるための『注意点』

職場では従業員が同じ目的や目標に向かって進むことが重要です。その中で、「多様性が大切だから」と、みんなが自分の考えで自由に動いてしまうと、方向性がバラバラになり、成果を出すことができません。

会社での多様性とは、会社のルールの中でお互いに認め合うことです。会社のルールは、服装や髪型など外見的なことから、働く上での考え方など、内面的なところまで決められていることがあります。

「多様性」の関係で、ルールに対して息苦しさを感じる人もいると思いますが、ある程度ルールを設けることで、快適な労働環境を維持することができます。

「多様性」のようで「わがまま」な人の特徴

「多様性」という言葉が社会に浸透してきていますが、多様性を履き違えている人も多いように感じます。ご本人は「多様性だから」と思ってしていることでも、「それわがままじゃない?」という事があります。 ※「わがまま」とは、周囲の都合や事情を考えずに、自分勝手に振舞うこと。

おさらいになりますが、多様性を認める目的は、『お互いの違いを認め合い、能力を最大限発揮して利益を出す』ことです。これより具体的な例をあげていきますが、「多様性」と「わがまま」の違いは、会社にとってプラスになるか、マイナスになるかを判断軸にしてください。

1.他者を不快にさせている

例えば「私は思っていることをストレートに伝える性格です」という人がいたら、それは個性として認めます。しかし、ストレートに言うことにより、周りの人が不快になっていたら、それは多様性だから仕方ないと我慢すべきでしょうか。

職場ではチームワークを良くして仕事の成果をあげることが求められます。チームの輪を乱すような自分勝手な言動は避けたいところです。ストレートに伝える性格は個性として持っておきながら、周りの人に配慮した伝え方をする必要があります。職場において他者を不快にさせている場合は、多様性ではありません!

例/ ■多様性

自分の意見をはっきり伝えることができる。伝えるときには、相手に配慮をして言葉を選んで伝えている。

■わがまま

自分の意見ははっきり伝えたい。だから、相手のことは考えずに、自分の言いたいことをストレートに伝える。

2.他者に迷惑をかけている

例えば「私は昇給・昇格しなくていい。プライベート中心の人生を送りたい」という人がいたら、これは個人の価値観として認めます。しかし、プライベート中心の生活にしたいからと言って「その仕事はできません」「新しい仕事はしたくありません」と仕事の範囲を自分で決めてしまうのは、ただの責任放棄でわがままです。組織では仕事を断ることにより、誰かに負担がかかることを忘れてはいけません。わがままが許容されることで、他の誰かに負担や迷惑がかかるのはおかしいと思うのです。

多様性を認めることで、一方が我慢を強いられるのは違います。組織に属する限り、自分のしたい仕事だけすることはできないと心得ることです。会社から求められることに対して、最大限能力を発揮して取組むことが社会人としての役目です。職場において、他者に迷惑をかけている場合は、多様性ではありません!

例/ ■多様性

キャリアアップは望まず、プライベート中心の生活がしたい。だから仕事では段取りをしっかり組み、時短を心がけ完了し、早く帰っている

■わがまま

キャリアアップは望まず、プライベート中心の生活がしたい。だから、新しい仕事や、面倒だと思う仕事はしない

3.ルールを守らない

例えば「私は茶髪がトレードマークです」という人がいたら、それは個人の価値観として認めます。しかし、会社のルールで茶髪が禁止ならば、茶髪を押し通そうとするのはわがままです。どうしても茶髪がいいなら、茶髪でもOKの職場に転職するという選択肢もあります。

職場では会社のルールを守り秩序を保つことが大切です。秩序が破られると、会社の機能が低下することがあります。また、個人ではなく会社の印象になるため、会社のイメージが悪くなる可能性があります。職場において、ルールを守らず自分の個性を主張することは、多様性ではありません!

例/ ■多様性

自分らしさを出すためには茶髪は必須だ。しかし、会社のルールで茶髪が禁止されているので、長期連休のプライベートの時間だけ茶髪を楽しもう。

■わがまま

自分らしさを出すためには茶髪は必須だ。だから会社に茶髪禁止のルールがあっても、そんなの関係ない。

まとめ

「多様性」を認め合う職場は大切だと思います。だからこそ、「多様性」を正しく理解することが必要だと感じています。新人教育をする中で、「多様性」ではなく「わがまま」だと思ったら、「あなたはそういう考えなのですね。で、どうしたらいいと思う?」と、否定せずに受け入れてから、指導をしてあげてください。

新人は「わがまま」が通ってしまうことで、悪いことではないという認識になり、本人のためにもなりません。新人教育担当者の方は、「多様性」なのか「わがまま」なのか見極めて指導をする力が必要ですね。


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