ヒューマンエラーとは?種類と防止対策【基礎知識】

2023年05月30日 2023年10月27日 ビジネスコミュニケーション

太田章代
執筆者:新人育成トレーナー 太田章代
新入社員育成専門の研修トレーナー太田章代です。

研修で受講者の皆様に「今まで仕事でミスをした事がない人はいらっしゃいますか?」と尋ねると、一人も手を挙げられません。誰もがミスをした経験があるのです。

うっかりミスをしてしまったことが、企業にとって深刻が問題に発展することもあります。

ここでは、ヒューマンエラーについて詳しく理解をし、ミスを最小限に防止できるように考えていきましょう。

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ヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは人間が行った行為が原因となって起こすミスや失敗のことです。仕事では、誤入力や誤操作などが要因で、お客様に迷惑をかけてしまったり、事故が発生してしまうことがあります。

その道のベテランでも、どんなに細心の注意を払っていても、人はミスをしてしまうものです。つまり、ヒューマンエラーをゼロにすることは不可能なのです。

ヒューマンエラーが起きたときの考え方

先にも述べた通り、「人はミスをするもの」という前提で考えなければなりません。ヒューマンエラーの結果生じるトラブルや事故は、小さなことから大きな損害になるものまで幅広いのが特徴です。

ヒューマンエラーが起きたときに、絶対にしていけないのが「あの人は仕事ができないから」と、ミスの原因を特定の人のせいにしてしまうことです。これではミスがいつまで経っても減少しません。ミスが起きたときは、人ではなく職場の環境や状況に問題があると捉え、ミスが発生しにくい環境を整えることが基本です。

ヒューマンエラーの種類と例

ヒューマンエラーは大きく3つに分かれます。1つめは「意図しないエラー」、2つめは「意図されたエラー」、3つめは「その他の要因によるエラー」です。では3つのエラーの詳しい内容をみていきましょう。

1.意図しないエラー

本人も意図せず「うっかり」「ついつい」起こしてしまうヒューマンエラーです。意図しないエラーが起こる要因は以下のようなものがあります。

・記憶エラー

記憶エラーとは、覚えていたはずなのにうっかり忘れてしまったり、知識やスキル不足などが要因になり起こるエラーです。

<記憶エラーの例> 納期を覚えていたつもりが忘れており、納品が遅れてしまった

・行動エラー

行動エラーとは、実行する上で不注意や見落としにより起こるエラーです。知識や経験不足、想定していなかった事態によりパニックに陥ったことにより引き起こされることもあります。

<行動エラーの例> Aのボタンを押すところを、急いでおりBのボタンを押してしまった

・判断エラー

判断エラーとは、置かれている状況に対して不適切な行動をすることにより起こるエラーです。思い込みや、知識不足などにより引き起こされることもあります。

<判断エラーの例> 上司に相談せずに、自分の考えで動いた結果トラブルが起きた

・認知エラー

認知エラーとは、思い込みで「〇〇だ」と決めつけてしまったといった固定観念や先入観が要因のエラーです。

<認知エラーの例> お客様から依頼された見積りを、急ぎではないと思い込み催促の電話がきた

2.意図されたエラー

エラーが発生するリスクを理解した上で、「やるべきことをやらない」または「やってはならないことをする」ことにより起きるエラーです。「決まったことを守る意識の低さ」や「作業の必要性に対する理解不足」が要因となっています。

・手抜きエラー

「面倒くさいから」や「慣れているから」と手を抜くことによりエラーが発生します。

<手抜きエラーの例> 最後に確認が必要な作業を、いつも問題ないからと確認しなかった

・決まり事を守らないエラー

決められた事を理解しているのに、勝手な判断でやめてしまったり、変更してしまったりすることによりエラーが発生します。

<決まり事を守らないエラーの例> 決められた手順があるのに、自分のやりやすい順番で作業をした

3.その他の要因によるエラー

・コミュニケーション不足によるエラー

チームで仕事をする際に報告・連絡・相談が不足していたり、正確に伝わっていないため正しい情報共有がされず発生するエラーです。

<コミュニケーション不足によるエラーの例> 備品の発注が済んでいたのに、また違う人が同じものを発注してしまった

・疲労や体調不良によるエラー

疲労が蓄積していたり、体調不良が原因で注意力が散漫になり起きるエラーです。

<疲労や体調不良によるエラーの例> 寝不足で仕事に集中できず、重要なメールを見逃してしまった

・心身の機能低下によるエラー

加齢により記憶力や認識力、肉体的機能が低下していることが要因で起きるエラーです。

<心身の機能低下によるエラーの例> 外出した際に他の用事を済ませようと思っていたが、すっかり忘れてしまった

・組織風土によるエラー

過度の緊張が強いられている職場や、意見が言えない環境など、プレッシャーや精神的な重圧が要因で起こるエラーです。

<職場の雰囲気によるエラーの例> いつも締め切りに追われており、生産性を追い求め過ぎて、するべき仕事を省略した

・場面行動本能によるエラー

一点に集中して仕事をしていると、他の大切な事柄を見落としたり、周囲が見えなくなることで起こるエラーです。

<場面行動本能によるエラーの例> 相談をしたかった上司が出かけようとしていたので、急いで駈け寄ろうしたら、床に置いてあった商品に気づかずに破損してしまった

ヒューマンエラー防止対策

ヒューマンエラーを防ぐための対策をみていきましょう。

過去のエラーをリスト化し周知する

今までどんなミスが発生しているのかリストアップすることで、ミスの防止策を立てることができます。ミスを他人事と思わず、自分も同じミスをしないように気をつけようという意識を高めます。

ミス防止対策を立て共有する

過去のミスをリストアップしたら、同じミスを起こさないための対策を立てマニュアルを作成します。起こりそうなミスを事前に知り対策をすることで、ミスやトラブルを減らすことができます。また、ミスが発生した際に、どうすればいいのか明確になっているため、迅速に対処でき被害を最小限に食い止めることができます。

業務マニュアルを整備する

ミスが起きないように作業手順や確認ポイントをまとめ、業務に関する情報が全社員に正しく伝わるようにマニュアルを作成して共有します。マニュアルにより作業の全体像を把握できるため、作業のムダやエラーを防ぐ上で効果的です。

業務環境を見直す

ミス防止のためには、業務そのものを見直すことが必要です。複雑な作業はエラーを発生しやすくします。従来の業務を、「簡素化する」「廃止する」「機械により自動化」するなど考えてミスを防ぐ体制を整えます。

ミスの報告がしやすい環境をつくる

ミスの報告をしたときに、怒ったり、吊るし上げたりすると、ヒューマンエラーは隠蔽されやすくなります。軽妙なミスでも報告しやすい環境をつくることで、事前に重大なトラブルを防ぐことができます。

まとめ

人はミスをするものです。大半のミスは悪気がないミスですので、ミスをした人に焦点を当てるのではなく、起きた問題に焦点をあてて対策を立て、ミスの発生を最小化していきましょう。


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