【管理職向け】権利ばかり主張する若手社員への正しい対処法|「義務を果たせ」と叱る前にやるべきこと

人材育成トレーナーの太田章代です。

「自分の権利はしっかり主張するのに、やるべきことはやらない…」

研修などで管理職の皆様とお話しすると、このような若手社員への対応に頭を悩ませているというお話を伺います。

今回は「権利ばかり主張して義務を果たさない」若手への対処法についてご紹介いたします。

どう指導すればいいか分からず、つい放置してしまった結果、相手の権利主張がますますエスカレートし手に負えなくなってしまった、というケースも少なくありません。

ここでは、そんなお悩みを抱える管理職の方へ、権利を主張する若手社員への具体的な対処法を分かりやすく解説します。部下と冷静に向き合い、建設的な指導を行うためのヒントがきっと見つかるはずです。


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動画でも学べます。聞き流すだけでも理解できますよ!

 

結論:頭ごなしに叱っても無駄。最も危険なのは「放置」すること

はじめからガッカリさせてしまうかもしれませんが、権利を主張する部下に「義務を果たしてから権利を主張しろ!」と頭ごなしに叱っても、残念ながら効果は期待できません。

そして、最もやってはいけないのが「放置」です 指導をしないことで、部下は「自分の主張は正しい」と勘違いし、要求をさらに強めてしまう悪循環に陥ります。

では、どうすればよいのでしょうか?

なぜ彼らは権利を主張するのか?原因は「知識不足」と「勘違い」

権利を主張する若手を、最初から「問題社員」と決めつけるのは早計です。彼らは悪意があるわけではなく、単に労働における「権利」と「義務」の関係性を正しく知らないだけ、というケースがほとんどなのです。

今の若手社員は、行動の目的や意味を丁寧に説明すれば、素直に納得してくれる傾向があります。

だからこそ、上司であるあなたがまず「権利と義務」について正しく理解し、部下と向き合って丁寧に指導することが重要になります。

対処の基本①:上司がまず学ぶべき「権利と義務」の基礎知識

部下に正しく説明するためにも、まずは基本をおさらいしましょう。

  • 権利とは:法的に認められた、特定の利益を受けられる資格
  • 義務とは:相手や社会に対して、果たさなければならない務め

労働契約は、労働者が会社(使用者)のために働き、会社がその対価として賃金を支払うことについて、双方が合意することで成立します(労働契約法第6条)。

この「合意」により、労働者と会社はお互いに義務を負い、その義務を果たすことで初めて権利を得られるのです。

大原則は「義務が先、権利が後」

  1. 労働者の義務:会社に対して「労働を提供する」という義務を負います
  2. 労働者の権利:その義務を果たすことで、会社から「賃金を受け取る」という権利が発生します


つまり、会社組織への価値提供(義務)が先にあって、その対価(権利)が生まれるという順番が、労働契約の大原則なのです。

ただ会社にいるだけで居眠りをしたり、自分の仕事を放棄したりすることは、会社に価値を提供していないため、「労働の提供」という義務を果たしていることにはなりません。

 

<労働者の義務>

  • 誠実労働義務:会社の指揮命令に従い、誠実に働く義務
  • 職務専念義務:業務に集中し、手を抜かずに遂行する義務
  • 職場秩序の遵守義務:職場のルールや規律を守る義務
  • 守秘義務:業務上知り得た秘密情報を漏らさない義務

<労働者の権利>

  • 賃金を受け取る権利
  • 休息・休暇(年次有給休暇など)を取る権利
  • 退職する権利

対処の基本②:会社側も「義務」を果たしているか?

労働者に義務を求める以上、会社もまた義務を果たす必要があります。従業員が安心・安全に働ける環境を整えることは、会社の重要な義務(職場環境配慮義務)です。

例えば、サービス残業が常態化していたり、上司の怒声が飛び交うようなパワハラが横行していたりする職場では、会社が義務を果たしているとは言えません。

労働者と会社、双方が義務を果たすことで、健全な信頼関係が築かれることを忘れないようにしましょう。

【ケーススタディ】繁忙期に「有給休暇を取りたい」と言われたら?

ここで、具体的なケースで考えてみましょう。

「沖縄旅行に行きたいので、来月の繁忙期に有給休暇を取らせてください!」


このような一方的な申し出を認めてしまうと、他の社員に多大な負担がかかり、チーム内に不満が溜まります。最悪の場合、真面目に頑張っている社員の離職につながりかねません。

この若手社員は、自分の権利を行使することしか考えておらず、組織の一員としての「義務」を理解していない可能性が高いです。

NGな伝え方

上司:「繁忙期なんだから、有給なんて取れるわけないだろう!」

これでは、部下は「権利を侵害された」と反発するだけです。「ネットには『有給は労働者の権利』と書いてあったのに…」と、不信感を抱かせてしまうでしょう。

OKな伝え方

まずは有給休暇が労働者の権利であることを認めた上で、義務とのバランスについて、理由を添えて丁寧に説明します。

上司: 「有給休暇はあなたの大切な権利だから、もちろん取得してほしい。ただ、会社で働く以上、知っておいてほしいことがあるんだ。それは、組織の一員としての義務を果たしてこそ、気持ちよく権利を使えるということです」

上司: 「あなたには、任された業務をやり遂げる責任や、チームに貢献する義務があります。もし今、繁忙期にあなたが休むと、大きな戦力を失うことになり他のメンバーにどれだけの負担がかかるか、一緒に考えてみてくれないか。まずは自分の義務を果たした上で、改めて休暇のタイミングを相談しよう」

このように、一方的に拒絶するのではなく、組織における義務と権利の関係性を教え、本人に考えさせることが大切です。

結論:指導の成否は「日頃の信頼関係」で決まる

ここまで具体的な知識や伝え方をご紹介しましたが、最終的に最も重要になるのは、日頃からの上司と部下の良好な人間関係です。

人は「何を言われたか」以上に、「誰に言われたか」で心を動かされます。

あなたが普段から部下と良い関係を築けていれば、このような話を真摯にしたとき、相手も「自分が間違っていました」「勘違いしていました」と素直に受け入れてくれる可能性が高まります。効果的な指導は、日々のコミュニケーションという土台の上にこそ成り立つものです。

まとめ:若手社員と向き合い、働きやすい職場を

権利を主張する若手社員への対応に悩んだら、この記事のポイントを思い出してください。

  • 頭ごなしに叱らない、放置しない
  • 上司が権利と義務を正しく理解する
  • 「義務が先、権利が後」という原則を、具体的な理由と共に丁寧に説明する


何よりも日頃のコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築いておく

部下を信頼し、お互いに歩み寄る姿勢で向き合うこと。それが、若手社員の成長を促し、誰もが働きやすい職場を作るための第一歩です。

            

            

            

            

            

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