カスタマーハラスメントの背景と対応策
2024年11月29日 2024年12月03日 ビジネスマナー、ビジネスコミュニケーション
人材育成トレーナー太田章代です。
最近、企業様からご依頼をいただくクレーム対応研修の中にカスタマーハラスメント(通称:カスハラ)の対応法を入れて欲しいとご要望があります。
以前からカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)はありましたが、近年増加傾向にあり、対応に頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、以下の内容をご紹介します。
・カスタマーハラスメントとは
・カスハラが増加している背景
・カスハラ対策における重要な考え方
・カスハラへの基本的な対応法
・企業としてのカスハラ対策
カスハラについて詳しく知りたいという方のお役に立てれば幸いです。
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動画でも学べます。聞き流すだけでも理解できますよ!
カスタマーハラスメントとは
カスハラとは、顧客が従業員に対して不適切な要求や言動を行い、心理的または身体的負担を与える行為を指します。要するに顧客からの「嫌がらせ」のことです。その行為はさまざまで、過剰なクレーム、暴言、威圧的な態度、長時間の拘束、不合理な要求などがあります。
カスハラが深刻化すると、従業員の精神的な健康を損なうだけでなく、企業全体の業務効率や職場環境にも悪影響を及ぼします。
私が研修に登壇した企業様では、カスハラに該当する顧客に悩まされ、店長はじめ従業員が一丸となって対応していますが、かなり疲弊している人もいると伺いました。
カスハラが増加している背景
カスハラが増えている背景には、以下のような社会的要因が挙げられます。
1.「お客様は神様」という勘違い
お若い方はご存じないかもしれませんが、昔、歌手の三波春夫さんが「お客様は神様です」とおっしゃっていました。日本では長い間「顧客第一主義」が重視され、サービス業では特に「お客様は神様」という考えが根付いてきました。しかし、この考えが極端に解釈され「お客様は神様だから、何をしようが構わない」と間違った捉え方をしている顧客が出てきたのです。顧客は大切にすべき存在ですが、神様ではありません。よって顧客からの著しい迷惑行為について、我慢して耐える必要はありません。
2.社会のストレス増加
現代社会では経済的不安や生活環境の変化などでストレスを抱える人が増えています。その結果、顧客という立場を利用して日常のストレスを従業員に向けて発散するケースが見られます。
3.インターネットの普及
SNSや口コミサイトが普及したことで、顧客は自身の意見を簡単に拡散できるようになりました。一部の顧客はこれを「武器」にして過剰な要求を行い、従業員や企業を困らせる場合があります。
カスハラ対策における重要な考え方
カスハラ対応の基本には、「顧客満足」と「従業員の安全」のバランスを取るという考え方があります。顧客満足度を上げるために、従業員が働きづらい環境を強いられるのは間違っているのです。
従業員が安心して働ける環境を整えることは、結果的に顧客への良質なサービス提供にもつながります。そのためには、企業が従業員を守る姿勢を明確に示し、全社的に取り組むことが重要です。
カスハラへの基本的な対応法
カスハラに直面した際の基本的な対応策を以下にご紹介します。
1.冷静さを保つ
カスハラを受けた際には、顧客の言動に直接反応せず、平常心を保ちながら冷静に対応することが大切です。感情的に対応してしまうことで、事態が悪化してしまうケースもあります。
2.記録を残す
カスハラを受けた際には、顧客の発言や行動を詳細に記録することが大切です。記録は、後々の問題解決や上司への報告、法的対応の際に役立ちます。
3.応じられない要求は断る
不当な要求や暴言に対しては、毅然とした態度を取る必要があります。「申し訳ございませんが、こちらでは対応いたしかねます」といった表現で、無理な要求を断る姿勢を示しましょう。
4.組織全体で取り組む
一人で対応しようとせず、上司や同僚、専門部署に助けを求めましょう。カスハラの対応は上司が引き継ぐルールをつくっている企業もあります。カスハラは個人ではなく組織全体で取り組むべき問題です。
5.適切なタイミングで対応を終了する
カスハラがエスカレートする場合は、会話を中断する選択肢も必要です。朝から夕方まで長時間、理不尽なことを言いつづけられというケースもあります。毅然とした態度で「このままでは対応が難しいため、一度話を切り上げさせていただきます」と終了させましょう。
企業としてのカスハラ対策
先にもお話しましたが、カスハラの対応は従業員個人の問題ではなく、組織全体で取り組むべき課題です。カスハラに関する社内規定やマニュアル等の予防策が一つでも取られていると、対応できる確率が8.8%高いという結果もあります。企業が取り組むべき施策をみていきましょう。
1.社内ルールを整備する
カスハラを防ぐためには、企業として明確な社内規定やガイドラインを策定することが必要です。具体的には以下のような内容を含めます。
・カスハラの定義と具体例
カスハラと正当なクレームのグレーゾーンがあるため、判断軸が必要です
・対応マニュアルの作成
第一対応者から上司に引き継ぐタイミングなど明確にしておきます
・記録や報告の内容
何を記録するのか、どのように報告をするのかなど決めておきます
2.従業員への教育とトレーニング
カスハラはクレームと同じで、誰が第一対応者になるかわかりません。全ての従業員がカスハラに適切に対応できるよう、定期的な研修を実施することが重要です。いざというときに備え、ロールプレイやケーススタディを取り入れたトレーニングを行うことで、実践的なスキルを養えます。
3.メンタルヘルスケアのための相談窓口の設置
カスハラにより、従業員は気持ちが落ち込み眠れないなどの心身に影響することがあります。また、実際にカスハラを理由とした退職者も出ています。カスハラ対応に従事する従業員のメンタルヘルスを守るために、心理的なケアや相談窓口を設置するようにします。また、相談窓口が設けられていることを従業員に周知するようにしましょう。
4.法的措置の検討
社内で対応が難しい場合には、外部委託も考える必要があります。顧客に対して法的措置を取ることも視野に入れ、弁護士などと連携し、不当な要求や暴言に対して毅然と対応する体制を整えましょう。
まとめ
カスタマーハラスメントは、個人の力だけでは解決できない深刻な問題です。企業全体で取り組むべき課題であり、従業員を守るための体制や教育が不可欠です。カスハラへの対策を強化することで、従業員が安心して働ける環境を整えることが、ひいては顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
執筆者プロフィール
- 新人育成トレーナー
アイキャリア株式会社太田 章代 - 企業・団体でのコミュニケーション研修、ビジネスマナー研修など、2,000回以上(2023年現在)登壇。 プロフィール詳細
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